腹黒エリートが甘くてズルいんです
「あ、仲田、さっき全然話聞いて無かっただろーー」


ん?
えびのカクテルサラダを取り分ける手が思わず止まる。


「え、聞いてたよ多分……」


正直、『大好きだった酒井君と二人で居られるくらい大人になった自分万歳』とか『あーやっぱ今でもその顔するんだぁ!』とか、確かに脳内は大忙しで、酒井君が何を話していたのか全部説明しろと言われたら無理かも。


「お前ねー、気を付けな。なんかにこにこしてるけど、話全く聞いてないっぽいなーと思ったから俺オシゴト小噺の合間に、お前にキスしていい? って聞いたよ」


「……は?」


急に飛び込んできたワードに、対応しきれないあたし。キスってなによ、キスって。


「そしたらお前、小噺聞いてにこにこしてたのと同じテンションで『うんうん』ってやってたぞ」


「いや、嘘でしょ」


口では否定しつつもあり得る、と思ってしまう自分が嫌だ。


「ほんとだよー、お前そんな調子じゃ合コンどころじゃねーよ、何されても文句言えないよ?」


うう、確かに。
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