腹黒エリートが甘くてズルいんです
あたしの言葉を受けて、酒井君が神妙な顔つきで黙りこむ。


「……いやー、そうね。俺もついついそんな言葉で煽ってはみたものの、結婚サイコー! とも言えないしな……」


「あ。ついにプライベート公表? 聞くよ、結婚生活のお悩み相談! 中学のアイドルだった酒井くんの赤裸々告白!」


「言わねーよ、そんなの」


ふふふ、と二人で顔を見合わせて笑う。


あたし達は、誰がどう見てもいい友達だ。
二人で飲んだ帰り道、酔った勢いに任せて手を繋ぐことすらない。(しらふでは手とか繋いじゃうタチのくせに!)

改めてこれでいいんだと思う。当たり前だけど。

何となく沈黙が続き、足音だけが響く。

「……なー、仲田」


「……なに?」


そしてまた沈黙。酒井君が割と面倒なタイプの酔っ払いだったらどうしよう。急に説教を始めるとか?……無くもない。

ちょっと身構えつつ、続きの言葉を待つ。


「ねー、俺ゲロ吐くかも」


!!
そっち系。それはやばい。


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