腹黒エリートが甘くてズルいんです
「ゲロ吐くほど酔ってる訳無いだろー。騙されやすいのな、仲田。中学生みたい」


楽しそうに笑う。
酒井君にとっては、何でもないのかもしれないけど。でも、ダメでしょう。


キスは、ダメでしょう。


「……奥さん、いるじゃん」


「いたら駄目なんだ?」


あまりの返しに、びっくりしてあたしも思わず唇を手の甲で拭いながら、一歩後ろに下がる。


「駄目に決まってるじゃん、そんなこと小学生でも分かるでしょ? それとも何、一夫多妻制の国にでも行ってた? おかしいよ。酒井君はそんなことする人じゃないと思ってたんだけど!」


一気にまくしたてる。
自分でも、何だか分からないけど、物凄く裏切られたような気持ち。


そんなあたしのうろたえぶりを、穏やかな微笑みで見守る酒井君。
何それ。


「じゃあ、奥さんが居なければキスしてもいいんだ?」


「それは何? この場には居ないじゃんとかそういうつまんないオッサンの言葉遊び? 見損なったよ」
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