腹黒エリートが甘くてズルいんです
一般論
***

「ねぇちょっと、桃色青春フィルターを外してもう一回最初から説明してくれる?」


由依が、半分に切られたグレープフルーツを力任せに搾りながら眉根に皺を寄せて言う。


会社の近くの、老夫婦が二人で切り盛りしているような、こじんまりとした和風居酒屋で、二人で飲みつつ報告をしたところ。
報告というのは、先週の酒井君との諸々について。



「……桃色青春フィルターって、何よ?」


あたしも負けじと力一杯グレープフルーツを絞りながら聞き返す。


「だーかーら。その、イケメンが初恋だとかそういうのは置いといて。実際、何がどうなってるの?」


どうなっているの、と言われても……と言葉につまる。
でも、由依の言いたいことは何となく分かった。

「とりあえず、初恋じゃないよ。中学生の頃、あたしが彼を好きだったってだけで」


「つまり、元カレと偶然再会したら焼けぼっくいに火がつきかけた、でオッケー?」


由依の言葉に、コントのように口に含んだ生搾りグレープフルーツサワーを吹き出しそうになる。
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