腹黒エリートが甘くてズルいんです
「ぶふっ……いや、なんでそうなるの?!」


あたしの返しに、由依がキョトンとしている。ボケでも何でもなくて、本気だった模様。


「えっ、何が?」


ああ、キョトンとしていても美人だなんて、神様って不公平。そんなことを思いながら、由依の顔をまじまじと見つめる。


「……とりあえず、酒井くんと付き合っていたことは、一度もないし。仲良くはしてたけど、あたしのただの片想いだし」


言いにくいけど、言っておく。世間には、由依のように、『好きになった人とはなんの苦労もせず自然に全員と付き合ってきましたー、えへへ』とかいうタイプじゃない人が沢山いるんだから。
いや、寧ろ、由依タイプの方が少数派のはず。


「あー、それは、一番こじらせるね。自分の中で理想ばっかり膨らんじゃうもんね。一回付き合っておけば、幻滅したりムカつくこともあるから、再会しても冷静に対処出来そうだけど」


あ。耳が痛い。それは確かにあるかもしれない。


「一応、冷静でいたつもりなんだけど。て言うか、既婚者っていう時点で冷めきるでしょ」
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