腹黒エリートが甘くてズルいんです
説明が終わっても黙り込んでいる由依をチラリと見れば、大分ご不満な様子。


「……なーにーよーそーれぇえ」


突き出した唇がかわいい。


「……何って、何が?」


うーん、と考えてから、由依が天婦羅盛り合わせから海老天を取り出し、あたしに断りもなく抹茶塩をちょんちょんと付けて一口かじる。

あ、いいな海老天、とぼんやり思いつつ、由依の綺麗な顔を眺める。


しゃく、しゃく、しゃく。


「あたしの推測だとさ、ムグ」



「いや、飲み込んでからでいいから」


しゃく、しゃく。


本当に、美人というのは得だ。天婦羅を食べているのを眺めていても何の不快感もなく、寧ろ、いつまでも見ていられる、と変態のような台詞すら浮かんでくる。


生搾りグレフルサワーをぐいっと飲んで、由依があたしにその顔を近づけてくる。


「あのね、これ、あたしの予想ね」


思わず身を乗り出す。自分でも何がなんだか分からないこの状況に何かしらの光が差すかもしれない、と思うとそうせずにはいられない。
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