腹黒エリートが甘くてズルいんです
「その、元カレは、具体的なアドバイスをするつもりは無かったんじゃない? セミナーじゃないんだからさー。そうじゃなくて、なんか縁遠くなってる莉緒を見て、こう、異性と二人で過ごすだけでもやっぱり気持ちがしゃんとするっていうか、違うじゃない? そういうことを経験させたかったんじゃないかなぁ?」


「……そんなもんかねぇ」


あたしにはよく分からないけれど、さすが由依だ、と思った。
あたしよりよっぽど男子と触れ合う機会のある由依の方が、きっと男心をよく分かっているだろうし。


あたしは、天婦羅盛り合わせの中から、第二希望だった茄子の天婦羅を取り出し、カレー塩を付けて食べた。


「……でもさ、キスはあり得ないよね?」


自分が一瞬、彼の腕の中から離れられなかった事は言わない。
だって、本当に一瞬だもの。
気の迷いの範疇だと思う。


「その彼がどんな気持ちでしたのかは分からないけど……深い意味があったら、色々まずいわけだよね。だって、莉緒にその気はないんでしょ?」
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