腹黒エリートが甘くてズルいんです
″その気″とは、一体何を指すのだろう。


酒井君と、どうにかなる気? それなら、即答出来る。勿論、そんな気は微塵もない。


あたしの沈黙をどう取ったのかは分からないけれど、由依が急にあたしの手を強く握る。


「でもね、莉緒。あたしはあんたの味方だから。その元カレとどうにかなりたいんなら、一般的にどうとか、道徳的にどうだとか、そういうことを抜きにして、莉緒の恋を応援するからね! あたし達の友情は、そんなことじゃ揺るがないから!」


な、なにそれ……。由依も相当酔っているのか、握ってきた手がとても熱い。


「……ありがとう、でも、あたしは大丈夫」


言ってから、何故か泣きそうになる。なんだろう、これ。


「もしかして、だけど。その元カレが結婚してなかったら、何か違ってた?」


静かに響く由依の声。


ああ、と合点がいく。それだ。


「どうにかなるかは別として、結婚していない状態で会いたかった」


自分で口にしてみて、胸のつかえが取れた気がした。
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