金魚の見る夢


「五年も経つのか。」

相澤が染々呟いた後、揚げ出し豆腐を摘む。

「相澤、歳食ったな。」

真奈美が肉を頬張りながら呟く。

「シワが増えた、見てくれも精神的にも。」

加勢する私が取ろうとした揚げ出し豆腐を相澤がさらう。

ラスト一個だったのに。

「貫禄が出たのさ。」

そう言うと相澤は、見せ付ける様にブツを口に運んだ。

なんて憎たらしい。

「そういや恐怖実話とか云うの読んだよ。」

あたた。

例のビデオに入る霊の声の雑誌って駄洒落になってしまったが。

「本当に面倒臭い連中だった。」

『マヂウザインダケド〜』だ。

それ位面倒臭い。

「何だそりゃ?」

私は?マークの相澤に経緯を説明する。

「はぁ。」

相澤、溜め息。

「あれに付いてたDVD見た?」

真奈美は詰まらなそうに付け合わせのポテトを箸で突く。

「見てない。」

「訳解らない霊能者が気絶してた。」

ははは、座布団一枚あげよう。

「笑いのセンスはあるね。」

「あんたも、放送禁止用語連呼したら、女優Sは怯えた様に口を閉ざした・・・何て書かれなかったのに。」

本気ですか?

「真奈美、したの?」

「編集長の愛人の名前だけしか言ってない。」

小指を立てて口元に寄せる真奈美がとてつもなく可愛く見えた。
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