金魚の見る夢


胃が重い。

部屋はもうエアコンを点けなくても程よい気温になって来たのだけれど、身体はだるい。

お酒を控えた方が良いかな、と思いながらウイスキーのグラスを傾ける。

テレビは下らない事に付いてやけに熱心に議論中。

今は、彼氏が浮気してるかも、と云う素人出演者に、そんな経験無いだろうと突っ込みたくなるデザイナーのババアが説教している所だ。

つまらない内容。

だけど点けて無いと何故か淋しい。

そんな夜も有るのだ。

溜め息が零れる。

幸せも零れた気がした。

そんな夜も有るのだ。

理由なんて見当たらないのだけれど。

突然行く先が不安に包まれ、憂鬱に襲われる。

自分でも面倒くさ。

グラスに残る琥珀色をグッと喉に流し込む。

テレビは点けたまま部屋の灯りを消す。

部屋にはタレントのバカ笑いだけが響いていた。
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