金魚の見る夢


『ああ、その話しなら聞いた事有るね。』

携帯ごしに真奈美の声が耳を擽る。

何だか心地よい。

「奈々が映ってるんだもん、びっくりしたよ。」

先程、先日見た奈々が出ていた映画の事を話した所だ。

『女優志望だったみたいね、あたしは風俗上がりだけどね。』

真奈美のカラカラと乾いた笑いが響く。

「私はスカウト・・・奈々は何でだろう。」

そんな事考えた事無かった。

いや、考えて無いふりしてた。

うーん、思考停止。

「そういや二人、式挙げないの?」

突然の話題変更に、電波越しにも、たじろぐのが判った。

『あ゛〜うん、色々と面倒でね。』

ははぁ、色々あるんだね。

「また、お祝いの飲み会をしようよ。」

『良いねぇ、カラオケも行きたい。』

「また、予定決めておいて。」

『オッケーだ、おっともうこんな時間。』

「あら、じゃあ予定決まったら電話して。」

『うん。』

「うん。」

『じゃ。』

「バイバイ。」


こうやって。

ゆっくりとした別れが染み込んでくるんだろうな。
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