金魚の見る夢


ぼんやりと艶やかな庭を見ているとカコンッ・・・とシシオドシの音が聞こえてきそう。

実際にはそんな物無いのだけれど。

一人待つ部屋はそれだけ静。

でも苔むした石の間を伝う水や、夕暮れを抜けた風がサヤサヤと小さな紅葉を揺らす様を見ているだけで、結構飽きない物だ。

風流だねえ。

なんて。

陽と夜の濃厚なブレンド感に控えめなライトアップがふわりと映えてまた宜し。

何だか癒されてるぞ、私。

もうちょっと、相手が遅れても良いな・・・なんて思う物じゃないわね。

キュッ、キュと廊下の軋む音が近づいて来た。

動く人影と共にスルリと障子が開くと、そこには何だか玩具を見つけた悪戯坊主の顔が有った。

勿論、見てくれの属性は大人、三十代中程だけど、何だほら、何と無く、そう云う笑い方なのだ。

「初めまして、駿河です。」

ひょろりとして見えるけど、黒いスーツの中身は案外とがっしりしてるな。

私は、横座りから身を正し三つ指着いてかました。

「鈴里みづきです。」
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