金魚の見る夢


「才能は有ったけど、相澤、何だか良くない連中と交通事故起したみたいで、天国アパートの少し後かな?それっきり見て無いな。」

ししとうの天ぷらを弄びながら監督が思考を過去に飛ばしている。

「そうですか、変なこと聞いてすいませんでした・・・そう言えばこの間『蒼い魚』見ましたよ。」

何だか急に話題を変えたくなった。

「どうでした?」

「水槽の光で青く染まる部屋がすごく綺麗で印象的でした、それに過去と現在が倒錯している感覚が不思議と気持ち良かったです。」

「部屋の壁が青く揺らめく感じには、結構こだわったんですよ、嬉しいな。」

監督は拘りに付いて何点か挙げた。

それに付いて、私の頭の半分がオートマチックに受け答えしている。

やがて、話題は私の体験エッセイの話しになり、監督が冗談で原作に使おうかな?とか言っている時も半分の頭で笑って答えた。

その後の話しにも、半分の頭で対談した。

残り半分の頭は、ずっと奈々と相澤に付いて考えていた。

結局答え何か出るはずも無く、ただただモヤモヤした気持ちが残った。

紳士に話す監督にも、何だか申し訳ない気がした。

だから、折角の料理も後半は味を余り覚えていない。

勿体ない話だ。
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