金魚の見る夢


憂鬱に取り付かれた夕暮。

年末のうわついた気配の中、斜めに傾いた心が冷たく沈む。


釣り合いだとか身の程だとかを、やっぱり考えてしまうのだ。

監督とあれから五回デートした。

三回目のデートでキスをした。

五回目のデートで体を重ねた。

そこで突然怖くなった。

何百回と行ったはずの、その行為の意味を深く考えた。

勿論、感染症の検査はマメにしている。

でも問題はそこじゃ無い。

そこじゃ無いのだよ。

ああ、全く自分が臆病者だと云う事を改めて思い知る。


心にブレーキがかかってる理由はそれだけだろうか。

分からない。

だめだ、考え無い様にしよう。

夕食を買いに行くついでに映画でも借りてこよう。
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