金魚の見る夢


電話を切って数分。

考え込んでしまった。

さてどうした物か。

取り敢えず監督と相澤は知り合いな訳だけどさ。

何だか照れくさいし、思う所も有るし、でも時間も無いし、ええいままよ。

電話しちゃえ。

携帯を手にして、メモリー検索。

発信!

テーブルの前で思わず正座。

1、2、3

『はい、駿河です。』

スピーカから監督のまったりした声が届く。

「ども、みづきです、今大丈夫ですか?」

『ああ、うん、どうしました。』

電話の向こうで移動する気配。

「実はですね。」

かくかくしかじか、と忘年会の日取りとメンバーを伝える。

『申し訳ない、その日はスポンサーと食事の予定が。』

「こちらこそ、急な話しでしたし、すみません。」

何故だか少しホッとする私がいる。

『でも相澤、結婚したんだな。』

感心する監督。

「晩夏の頃です。」

『妙に固い表現ですね。』

監督の柔らかい笑い声。

「ですかね?」

『ああ、すみません何となくです、あっ今回の埋め合わせは必ずしますので。』

少し考える私。

「そですね、じゃ今度、美味しいラーメン屋さんにでも連れてって下さい。」

ふふふ、少し監督とはミスマッチな感じかな。

『了解です、こう見えてラーメン屋はちょいと詳しいんですよ。』

あら意外、でも楽しみ。

「お願いします。」

『喜んで。』

「じゃあまた電話します。」

『また。』

ふう。

足を崩し後ろに倒れる。

しばらく天井を眺めた後真奈美にメールを送る。

タイトル無し。

『忘年会は一人になりそう。』

程なく真奈美から返信。

こちらもタイトル無し。

『やっぱりね、まあ良いよ。』

おいおい。

まあ良いか。
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