金魚の見る夢


「で、みづきは誰連れて来ようとしてたのかな?」

肘をつきグラスを両手で包む様に持つ真奈美が潤んだ瞳をこちらに向けている。

嗚呼、色っぽいねぇ。

「内緒、またのお楽しみ。」

なんて、はぐらかてみたり。

「男?」

相澤、ホッケをほぐしながら聞くが目線は箸先に釘付け。

「ええ、まあ。」

「良い感じ?」

真奈美は真っ直ぐ目を見る。

照れるよ。

「うーん、分からない。」

正直分からない。

「みづきは女の子好きかと思った。」

真奈美の衝撃発言に思わずむせる。

「一応ノーマルのつもりだけどなぁ。」

なんて言いながら、真奈美の手をそっと握る。

「あたしならオッケーよん。」

握りかえされた指先ををカリと甘噛みされる。

「いけませんわ、旦那様が見てらっしゃいます。」

「アホ。」

私の渾身の演技を、相澤が一蹴。

「・・・私達の知ってる人?」

この娘と来たら。

「ノーコメンツ!」

「成る程、知ってる人ね。」

シシャモを頭からかじる真奈美。

「意地悪。」

そんなやり取りの中、店の扉が開く気配。

火照った体に冷たい風が心地よい。

「いらっしゃい。」

飯田氏の威勢良い挨拶に振り向いた相澤が目を丸くする。

「あっ!」

「どうも。」

えっ?

知った声に私も勢いよく入り口に顔を向ける。

「来ちゃいました。」

監督!
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