潮風の香りに、君を思い出せ。
「勇気ってね、気合入れてよいしょって出すものでもないと思うんだよね。リラックスして怖い気持ちがなくなれば、自然と湧いてくるんじゃないかと思う」
暖かい両手で包み込むようにマッサージを始めながら、あかりさんは言葉でも励ましてくれる。
「七海ちゃんて相当頑張ってるみたいだし、これ以上頑張って勇気出さなくってもいいんだよ。大地の言うことなんて気にしなくてもさ。出しても出さなくてもいいんだよ、そんなの」
あ、そういうこと、昨日もあかりさんから聞いたと思う。
「昨日も、がっかりしてもしなくてもいいって言ってくれましたけど、それと同じ?」
「そう。こうしなくちゃってことなんて、そんなにないって私は思ってる。大地のバカは結構がっちがちなんだよね、そういうとこ」
ああ、ちゃんとしなくちゃダメと言うところを指しているのか。がっちがち? あんなにゆったり構えてるように見えるのに。幼馴染は厳しいな。愛ゆえにかな。
確かに、ちゃきちゃきとしたあかりさんのほうが軽やかでリラックスしている雰囲気はある。
「あかりさんってかっこいいなぁ」
「店長の受け売りだし口先だけかな、私も。まだまだこれからだよね、お互い」
また間近で私の目を見て、にっこりと笑う。いいこと言ってくれるのに、押しつけがましくない。私、本当に好きだなぁ、この人。
あかりさんとのおしゃべりとアロママッサージで、十分勇気が湧いてきた。やっぱりおばあちゃんちを見て帰ろうと決める。誰もいなくても、あの小道を通って行くだけでいい。
何もなければそれでいいし、何かあっても大地さんが一緒だと自分を励ました。