潮風の香りに、君を思い出せ。
それからも大地さんは、週末に何度かサークルに顔を出していた。
テニスコートで私を見るとすぐ「大地だけど、覚えた?」って笑って聞いてくるので、いい加減覚えた。というか、こういうこというのは大地さんと覚えた。
たまにしか会わないから顔は難しかったけど、同じテニスウエアを着ていたし、他の人達を覚えたから消去法でわかる。
「しつこいですよ、覚えましたよ」
と、私も余裕のフリで切り返すことができるぐらいにはサークルに馴染んでいった。
冬の間は一度も見かけなくて、春の新歓合宿にまた来たんだ。
その時のことは、よく覚えている。
午後のテニスコートに一人で現れた彼は、たまたま私がコート外の自販機で新入生と休憩していたところに来て「よう、久しぶり」と声をかけてくれた。
テニスウエアじゃなくてメガネをかけてて、ぱっと見では誰だかぜんぜんわからなかった。背の高い男の人だ、OBかな。
曖昧ににっこりと「こんにちは」と会釈をしたら「また忘れられたかぁ」と言われた。この反応は大地さんかなと思ったけど、確証がなくて言いきれない。
「そんなことないですけど、いつもメガネかけてましたっけ」
と当たり障りのなさそうな質問を選ぶ。
「かけてないけど、そんなに人相変わるかなあ」
困ったような声で言ってメガネを外したところに、一つ先輩のアサミさんが走ってきた。
「大地さーん!お久しぶりです!半年ぶりじゃないですかぁ、もっと来てくださいよ」
そうだ、こうやって声をかけるのが普通なんだ。
「ようアサミ。久しぶり過ぎて俺また忘れられてたみたいだよ」
大地さんはメガネを弄びながら、呆れたのか面白がっているのか微妙な態度だ。
「メガネをかけてたから、一瞬わからなくて」と言い訳したら上手くいかず笑われたけれど気を悪くした様子はそんなにない。よかった、切り抜けられたと思った。
テニスコートで私を見るとすぐ「大地だけど、覚えた?」って笑って聞いてくるので、いい加減覚えた。というか、こういうこというのは大地さんと覚えた。
たまにしか会わないから顔は難しかったけど、同じテニスウエアを着ていたし、他の人達を覚えたから消去法でわかる。
「しつこいですよ、覚えましたよ」
と、私も余裕のフリで切り返すことができるぐらいにはサークルに馴染んでいった。
冬の間は一度も見かけなくて、春の新歓合宿にまた来たんだ。
その時のことは、よく覚えている。
午後のテニスコートに一人で現れた彼は、たまたま私がコート外の自販機で新入生と休憩していたところに来て「よう、久しぶり」と声をかけてくれた。
テニスウエアじゃなくてメガネをかけてて、ぱっと見では誰だかぜんぜんわからなかった。背の高い男の人だ、OBかな。
曖昧ににっこりと「こんにちは」と会釈をしたら「また忘れられたかぁ」と言われた。この反応は大地さんかなと思ったけど、確証がなくて言いきれない。
「そんなことないですけど、いつもメガネかけてましたっけ」
と当たり障りのなさそうな質問を選ぶ。
「かけてないけど、そんなに人相変わるかなあ」
困ったような声で言ってメガネを外したところに、一つ先輩のアサミさんが走ってきた。
「大地さーん!お久しぶりです!半年ぶりじゃないですかぁ、もっと来てくださいよ」
そうだ、こうやって声をかけるのが普通なんだ。
「ようアサミ。久しぶり過ぎて俺また忘れられてたみたいだよ」
大地さんはメガネを弄びながら、呆れたのか面白がっているのか微妙な態度だ。
「メガネをかけてたから、一瞬わからなくて」と言い訳したら上手くいかず笑われたけれど気を悪くした様子はそんなにない。よかった、切り抜けられたと思った。