潮風の香りに、君を思い出せ。


「大学で楽になったんだよね。サークルではテニスも下手だし、性格もすぐこんな感じがばれて、見掛け倒しとかヘタレとか言われて。でもがっかりされても気にしなければそのまま受け入れられてくんだなってやっとわかって。別にそんなにモテたいわけでもなかったのに、なにやってたんだ俺は、と思った」

髪をかきあげて、照れたように笑う。

「初対面の女の子は今でも苦手でさぁ。なんか期待されて後でがっかりされるの見えちゃったり、ついかっこつけてみたりしちゃったり。でも気にしてもしかたないんだよな」


がっかりか。そういう顔は私も見たことある。

「がっかりさせても、しかたないのかな」

気がついたらつぶやいていた。大地さんは言葉を切って、微笑んで私を見る。

「俺はね、期待を裏切ってがっかりさせても、俺は俺だから諦めてくれと思ってる」

「バカだから諦めてはダメって私に言ったのに?」

なんか矛盾してる気がして、思わず抗議する口調になる。

「あー。そうか。説得力ないかなぁ……でもバカだからとかダメだからとは、思ってないよ」

「俺だから?」

俺だから諦めてって言ってた。

「そう。俺はこういう奴だから、それで諦めてくれって」



そうか。だから大地さんは、かっこ悪くてもかっこよくいられるんだろうな。自分は自分って、自信を持ってる。
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