潮風の香りに、君を思い出せ。
その後、自然と共通の趣味であるテニスの話が出た。大地さんはプロの試合を見に行くこともあるらしい。迫力が違うから、テレビより絶対面白いよと力説している。今度湾岸でやる大会に行こうという話になる。

そうか、次の約束していいんだって気づいて、今さらどきどきする。私はまだ、この展開をどこかで信じていないんだと思う。

「私はテレビでもそんなに試合見ないかも。見るよりやる方が多いかな」

何ヶ月もラケットに触ってもいないくせによく言う、と言ってから自分で思った。

「七海ちゃんは、試合の時は強気でいられるんだよね」

「試合になっちゃえば自分と相手しかいないし、やるしかないので。大地さんは、サーブで弱気になっちゃうんですか?」

「セカンドのときは後がないしなぁ。特に人が見てたりするとビビるね」

注目されるのが苦手ということだろう。見た目がいいのに本当にもったいない。

「私は応援されて張り切るタイプかも。応援するのも好きだし、対戦相手とも仲良くなったりするし」

とそこまで言って、そうだ、そこでもやっちゃってるって思い出す。

「それもだんだんテニスがきつくなってる理由かも」
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