潮風の香りに、君を思い出せ。

「覚えられない話?」

「そう。大学だと知ってるはずの人がいっぱいいるじゃないですか。交流あるサークルの人とか、前に試合で当たった人とか。
試合のときはウエアとか雰囲気で結構わかるんですけど、大学内ですれ違ったときは、挨拶されるととりあえず合わせてみるけどわからないこともあるみたいで。感じ悪いと思われてるんだろうなぁと最近特に気になっちゃって。いちいち全員に、覚えられないって言って歩くわけにもいかないし」

そうだった。試合の時はたとえ忘れてても、同学年の友達にくっついて誰だか教えてもらったりしてる。ペアを組んでた先輩もわかっててすごく助けてくれた。

「だよなぁ、昨日説明足りないとか言ってごめんな」

「いいんです。大地さんは謝りすぎ」

こうやって思い出すと、理解して助けてくれる人だってちゃんといたってわかる。昨日はわかってもらえない話、信じてもらえない話ばっかりで拗ねていた自分が確かにいた。

そもそも私が矛盾してるのかも。覚えられないから諦めて欲しいのに、周りの想像以上にできない時はなんとか隠したい。そこまでバカだって思われたくない。そうなったら怖い。

私は私だからって、言えないなぁ。

あ、おどおどするなって、アサミさんに言われた。もしかして、ああいう態度がまずいのかな。開き直ったらいいの? でもわからないけど強気でいるとか、無理だよね。
< 117 / 155 >

この作品をシェア

pagetop