潮風の香りに、君を思い出せ。
コインパーキングに駐車して、大地さんが駅前のロッカーを開ける。丸められたジャケットと、大地さんの仕事かばん。 私の重たい勉強道具。
「バッグ貸して」
大地さんに言われて、お任せした。
昨日見た駅前のロータリーを眺める。あれは眩しい始まりの朝だった。今は終わるところなのかな。何か、変わったんだっけ。もう疲れてよくわからない。
大地さんはまたロッカーに鍵をかけている。自分の荷物はまた入れてしまったようだ。
「どうせまた取りに来るから」
大地さんはお父さんとまだ話もしてないみたいで、たぶん明日帰ると言っている。
「ほんとに一人で平気? 俺、電車一緒に乗ってくよ?」
何度目かの確認をされる。
「大丈夫。一本だし、始発で座れそうです」
「そうか。わかった」
なんだかんだ言ってくれても、私の希望を優先してくれるのでついわがままを言った。
手を振って、改札で別れる。
「気をつけて。またね」
大地さんはさっぱりと言って行ってしまう。見送ってもくれない後ろ姿を見て、自分で言いだしたくせにまた落ち込んだ。
彼と話がついたとは、大地さんに言えなかった。さっきのあの終わり方はなかったと自分でも思ったから。
これから私はどうしたらいいのか、全く思い浮かばなかった。