潮風の香りに、君を思い出せ。
君に会いに行こう
自分の部屋でベッドに寝転んで、もう一度考えてみる。今日大地さんと話したことも色々思い出すけど、連絡先に関わることなんて全然何も思い出せない。だいたい、忘れてもいいとか思い出させるとか言ったの大地さんなのに。
そういえば、あかりさんのお店の番号はわかる。昨日かけたから発信履歴にも残っている。まさか、あかりさんに聞いてって言う意味だったりして。無神経にも程があるけど、大地さんだったらありかねないと思ってしまうのが困る。
ふーっと息を吐いて、それは最終手段に使おうと決める。連絡が取れる当てができてちょっとホッとした。
とりあえず、電源を落としたままだった携帯をバッグから取り出して起動した。新着メッセージを慌てて見たら、大地さんではなくて慎也くんからだった。
【さっき途中で終わった感じだったから、もう一回話したい】
逃げるように慌てて切ったこと、やっぱりおかしかったかな。話すことなんて別にもうないけれど、慎也くんのほうは何か言いたいことがあるのか。
SNSやメールじゃなくて、こういうときは話すべきだよね。逃げちゃダメってわかってるけど、やっぱり何を言われるのかとすごく気が重い。
そうだ、あかりさんに選んでもらった勇気の出るブレンドを嗅いでからにしようとひらめいた。
机の上に、バッグの中身を全部出す。教科書、ノート、ペンケース、化粧ポーチ、タオル。順番に出していくと見つかった。きれいな紙袋に入ったアロマのボトルだ。
ティッシュの上に数滴垂らして、息を吸い込んでみる。わぁ、あかりさんのお店に戻ったみたいな気がする。あのときの明るくて元気が出てきた気持ちまで戻ってくる。