潮風の香りに、君を思い出せ。
そういえば海でさんざん汚したし、中身を全部出してバッグをきれいにしようと思い立つ。
机の上でバッグをさかさまにひっくり返したら、どこからかころりと白いパッケージが出てきた。見覚えのあるシンプルで細長い四角い箱。
え? なにこれ。大地さんが入れたの? 間違って? いや、くれたの? 私がつけたら意味ないのに!
意味がわからないまま手に取ると、裏側に小さく電話番号やアドレスが書いてあるのを見つけた。
それからもうひとつ。
【思い出したら連絡して 大地】
思い出せるってそういう意味だったんだとやっとわかった。でも忘れてないよ、バカ。
こんなのいつ入れたんだろう。あ、駅のロッカーでバッグを渡した時か。やけにさっぱり別れを告げて、多分そっとしておいてくれようとしたんだ。
でも、こんなの、気づかなかったらどうするの!
連絡先聞かれなかったとか拗ねちゃうかもしれないでしょう、私。もうそんな風に考えないって思ってたのかな。でも考えるかもしれないのに。終わっちゃったような気がしてたのに、大地さんはやっぱり全然わかってない。