潮風の香りに、君を思い出せ。
住宅街を抜けて歩いて行くと、思ったよりすぐに広い海岸に出た。確かに近い。いつもあの電車に乗ってたのに、こんなに近いならもっと前に来てもよかったのに。
アスファルトの道路脇から、幅広のコンクリート階段を数段降りればすぐ砂浜になる。乾いた灰色の砂が風にあおられている。
左右両側にかなり長く砂浜が続き、右の遠くの方は湾になるようにカーブして、こんもりと緑が茂って青空に映えている。なんだか見覚えがある。でも、テレビで見たことのある景色かもしれない。
電車の中で見えたのは、こういう広い海とは全然違う。こじんまりした港だった。そうだ、海沿いの大通りを越えたら港があるけど、そっちには子供だけで行ってはいけないことになっていた。
親と行った?いや、違うなぁ、友達とだったような。私っていうことあまり聞かない子だったのかな。だからお姉ちゃんに呼び戻された?それはありうる。
なんとなくでも何だったのか思い出せて、少しいい気分になる。ここは砂浜ばっかりで、このあたりに住んでいたっていうのはやっぱり勘違いっぽいけど。
日差しが暖かくて、生ぬるい風が強く吹いていて、気持ちいい。風の音に混ざる波音を聞きたくて目を閉じる。それでも眩しいくらいの明るさを受け止めて上を向く。
潮の匂いもする。さっきの電車のときとはちょっと違う匂いかなぁと思って、ふと現実を思い出す。
大地さんは?
振り返ると斜め後ろにいる。ポケットに手を突っ込んでリラックスした様子でまぶしそうに遠くを眺めている。遠くに見えるのは、ウインドサーフィンか。
「そういえば大地さんて、かっこいいんでしたよね」
確かにそんな雰囲気だ。
「覚えられなくてすみません。きれいな顔は苦手なんです」
かえって失礼かなと思って、いつもは言えない本音を言ってみた。
きれいな顔は私には難しい。かなり慣れるまでは、みんな同じに見えるから。
大地さんはあっけにとられたように口を開けていた。ああ、そういう驚いた顔してずっとしててくれてたら覚えられそうなのにと思う。無理だよね。
アスファルトの道路脇から、幅広のコンクリート階段を数段降りればすぐ砂浜になる。乾いた灰色の砂が風にあおられている。
左右両側にかなり長く砂浜が続き、右の遠くの方は湾になるようにカーブして、こんもりと緑が茂って青空に映えている。なんだか見覚えがある。でも、テレビで見たことのある景色かもしれない。
電車の中で見えたのは、こういう広い海とは全然違う。こじんまりした港だった。そうだ、海沿いの大通りを越えたら港があるけど、そっちには子供だけで行ってはいけないことになっていた。
親と行った?いや、違うなぁ、友達とだったような。私っていうことあまり聞かない子だったのかな。だからお姉ちゃんに呼び戻された?それはありうる。
なんとなくでも何だったのか思い出せて、少しいい気分になる。ここは砂浜ばっかりで、このあたりに住んでいたっていうのはやっぱり勘違いっぽいけど。
日差しが暖かくて、生ぬるい風が強く吹いていて、気持ちいい。風の音に混ざる波音を聞きたくて目を閉じる。それでも眩しいくらいの明るさを受け止めて上を向く。
潮の匂いもする。さっきの電車のときとはちょっと違う匂いかなぁと思って、ふと現実を思い出す。
大地さんは?
振り返ると斜め後ろにいる。ポケットに手を突っ込んでリラックスした様子でまぶしそうに遠くを眺めている。遠くに見えるのは、ウインドサーフィンか。
「そういえば大地さんて、かっこいいんでしたよね」
確かにそんな雰囲気だ。
「覚えられなくてすみません。きれいな顔は苦手なんです」
かえって失礼かなと思って、いつもは言えない本音を言ってみた。
きれいな顔は私には難しい。かなり慣れるまでは、みんな同じに見えるから。
大地さんはあっけにとられたように口を開けていた。ああ、そういう驚いた顔してずっとしててくれてたら覚えられそうなのにと思う。無理だよね。