潮風の香りに、君を思い出せ。
柔らかい砂浜を踏みしめるように歩いて行く。

空高く、鳥が飛んでいる。

電車で思い出した景色にはカモメがいた気がするけれど、これは違う鳥に見える。



立ち止まって見上げていたら、少し先を行く大地さんが振り向いて戻ってきた。

「何か見える?」

「鳥、なんだろうあれ、カモメじゃないですよね」

「ああ。トンビね。油揚げさらわれるから気をつけて」

「持ってないですよ」

「あいつらなんでも食うよ。一直線に襲ってくるから、食べ物見えると危ないんだ」

まぶしそうに見上げながら警告された。あんなに高く飛んでるのに? なんとなくぴんとこなかった。

そんな疑いが伝わったのか、大地さんが付け足していう。

「あの辺からでも、気を抜くと一気に来るから。ほんとに。その辺に座って弁当広げてて、指怪我したりするんだよ」

「怖そう。気をつけますね」

手で持っていても安全じゃないということだ。なるほど、気をつけよう。



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