潮風の香りに、君を思い出せ。
大地さんは紹介してくれるでもなく、タオル取ってとか色々言ってる。

「大地、まずは紹介しなさいよ。ごめんなさいね、顔ばっかりでダメな息子で。顔も性格も父親に似ちゃったの」

いきなりのダメ息子扱いに驚きつつ、慌てて自己紹介する。

「いえ、あの、お世話になってます。サークルの後輩の春日七海です。今日も迷惑かけてばっかりで、こんなことになってしまって」

「大地の母の香世子です。香の世界の子どもね。かよこさんって呼んでね、ナナミちゃん。とりあえず外の水道で足を流してもらって、申し訳ないけど大地からシャワーかしらね」

素敵な名前だなぁ、香の世界の子どもだって。女の子らしくていい。いきなり漢字の説明されるのは珍しいことだけど、いい名前だから言いたくなるのもわかる。



「水道こっち。タオルこれ使うよ」

出番がなかったからか気まずそうな大地さんと一緒に、玄関脇の水道で足を流す。

しゃがんだ大地さんが、タオルで足を拭いてくれた。

うわぁ、これなんかすごく恥ずかしいんだけど、大地さんはごく普通なので気にしないようにしないと。

でも顔を上げた大地さんが私の赤い顔に気づいたのか「あ、ごめん、自分でやるか」と慌ててタオルを渡してきたので、左足は自分で拭いた。

ますます恥ずかしい。なに意識してるんだろ、私。

そのまま無言で家に入った大地さんを少し遅れて追いかける。

もう赤くなってないよね?
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