潮風の香りに、君を思い出せ。
「ナナミちゃんの服も海水で濡れたんでしょ? 洗った方が良さそうだけど、リカの服でサイズ平気かなぁ」
香世子さんが私を観察しながら言う。
「平気だろ、同じぐらいな気がする、ちっちゃいし」
髪を拭きながら大地さんが答える。リカちゃんて言うのは妹さんか。男の人が思う同じくらいなんて当てにならない気もするけど、着られるかな。
「何がいいんだろう、ちょっと二階に来てくれる?」
香世子さんに案内されて二階に行く。でも勝手に借りていいのか、後で嫌がられないか少し心配になる。
「リカの服なんて、適当によく貸してるからね、気にしないでね。あの子が着ない服ばっかり置いてあるから、あんまりいいものないかもしれないけど」
香世子さんが気付いたように言ってくれた。よく貸すほど女の子が来るのかな。ナナさんかな。
「リカちゃんってどういう漢字ですか?香世子さんと同じ香り?」
「そう、梨の香りで、梨香。ナナミちゃんは菜の花の菜?」
「いえ、七つの海と書いて七海なんです。なぜか名前だけ豪快で困ってます」
「七つの海。いいじゃない、大地とぴったりね」
親子で同じような感覚みたい。菜の花の菜々なのかな、ナナさんは。そっちのほうが大地さんにお似合い。