潮風の香りに、君を思い出せ。

「何言ってんの」

あかりさんが呆れたように答える。

「七海ちゃんに覚えてもらえないって愚痴ってたじゃん、去年」

「あー、言った?そうだっけ」

「よかったじゃないの、覚えてもらえたんだ?」

カウンターの向こうから出てきたあかりさんが、大地さんの肩に肘を乗せて偉そうに言う。

大きい、この人!

足元を見るとウェッジソールで8㎝ぐらいはありそうだけど、それにしたって結構背のある大地さんに届きそう。

「でかいよね。168㎝あるんだよ」

大地さんが私の驚きに気づいて言う。

「かっこいいです」

見上げて答える。二人が並ぶとかっこいい。

あかりさんはウェッジサンダルにショーパンで白のラフなカットソー。海辺の人らしい、うっすらと日焼けしたきれいな肌。

なんでよりによってかぶったんだろう、服。向かい合った私のこどもっぽさが際立ち、運の悪さを呪いたくなる。

「そう? ありがと、七海ちゃん」

あ、笑うと目尻にシワ。ちょっと雰囲気も似てるかもしれない、大地さんと。幼馴染ってそんなもの?

大地さんの同級生なら二十四才位だ。子どもっぽくならないでカジュアルな服を着こなせる女の人っていいなと憧れる。細いのに背が高いからか、ボリューム感のある大人の身体つき。



こういう人を見慣れてたら、そりゃ私を見たら白くて小さくて色気ないよね。
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