潮風の香りに、君を思い出せ。
話は続いているけれど、私は棚の方を向いてじっくり見せてもらうことにする。
小さなアロマオイルの瓶が種類別に整然と並んでいる。茶色や緑もあるけど、この深い青の瓶のシリーズがきれいで気に入った。
いや、瓶の色で選ぶものじゃないか。
ローズ、ジャスミン、ラベンダー。知っている花の名前以外に、聞いたことのない不思議な名前がたくさんある。イランイラン、ジュニパー、ネロリ。
何か買おうかと考えると、ブレンドされているものの方がわかりやすそう。リラックス、リフレッシュ、チアアップ。いろいろ目的別の商品もあるから、どれにしようか。
私に必要なのはなんだろう。コンセントレーション、集中力アップか。記憶力が上がったりしないかな。
アロマオイルが焚いてあったらしい大地さんの家は、なにか森みたいな香りがしていた。
日本の木の香りっていうシリーズも並んでいるけど、少し甘い香りな気もしたからウッド系のブレンドっていうこのあたりかな、とサンプルを手に取って開けてみる。
「その辺、森みたいでしょ」
他にお客さんもいないので、あかりさんが話しかけてくれる。大地さんの話は終わった様子だ。
「大地さんちってこんな感じでした」
「あ、ほんと?使ってくれてるんだ。時々香世子さんも買いに来てくれるの」
うちにお土産で買っていくならそういうのもいい。でも自分用なら、森ではないと思う。
「何個も嗅いじゃうと違いがわからなくなるかも」とあかりさんが教えてくれたので、まずは見るだけにしてじっくり考える。