潮風の香りに、君を思い出せ。

あの日を思い出した


気まずい私たちを励ますように、あかりさんがいろいろこれから行く場所について話してくれた。


改めて私の覚えている場所はマリーナか漁港かという話になり、林と小道があったと思うと言うと、漁港のほうが有力候補になった。

でもマリーナのほうが先にあるから一応寄って確認しようと、大地さんとあかりさんで相談している。



「そろそろマリーナだよ。どうかな、七海ちゃん。こんな感じのところ?」

あかりさんが明るく言ってくれる。

うろ覚えの記憶の場所を理由もなく探してもらって、雰囲気最悪にして、何やってるんだろう私。切り替えなくちゃ。

「えーと、ごめんなさい。こういうかっこいいんじゃなくて、もうちょっとボートみたいな船だったような」

マリーナの船は小ぎれいで意外と大きくて、私が思っていたものとは違った。全体的にこの場所は違う。閉じていて人の気配がしない寂しい場所という気がする。あの場所は、もう少し開けている海辺だった。

「やっぱり漁港かな。小さそうなんだよな、聞いてると。向こう回ったとこの漁港って林がなかったっけ。あそこじゃないかと俺はにらんでるんだけど」

「そんなのあった? 私こっちのほう来るけど細かく見てないから、わかんない。とりあえず行ってみようか」



ここかそこだと思い込んでいる二人の会話を聞きながら、緊張して来た。

こんなに手伝ってもらって、全然見つからなかったらどうしよう。電車でぼんやりして見た夢みたいなもので、本当にあんな場所なかったらどうしよう。

せっかく信じてくれたのに、またダメだったら。

バカですいませんって言っても、大地さんはきっと聞いてくれないし、なんて言えばいいんだろう、そういう時。
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