潮風の香りに、君を思い出せ。
あれ。このバスどこで降りればいいんだろう。
もういくつかのバス停に停まった。降りる停留所を聞いておけばよかった。大地さんは気持ちよさそうに眠っていて、起こすのも悪いけどしかたないか。
ふと、携帯のマップに大地さんの家を登録してあることを思い出す。
スマホを取り出して地図アプリを起動して登録地点と現在地を見比べると、だいぶもう大地さんのうちに近づいているのがわかった。どのバス停かまではわからない。
やっぱりそろそろ起きてもらうことにした。
「大地さん、たぶんもうすぐです」
左隣の大地さんの肩を叩く。うん、とか言ってるけどちゃんと起きない。
「大地さん」
今度は耳元で言ってみる。
「うわっ」と大地さんが座席から前に落ちそうな勢いで目を覚ましてから、気づいて今度はばっと身を引いた。
「あ、ごめん、俺寝てた?」
「大丈夫ですか?」
「なんか夢見てた。起きても七海ちゃんがいたからびっくりした」
起きても? 私が出てきたってこと?
「え?」
「いや、なんでもない。ていうか、次だ」
と言って私を通り越して窓枠のボタンに手を伸ばした。
今度は私が身体を引く。この人、本当に距離感がおかしい。