潮風の香りに、君を思い出せ。

「でも顔がよくわからない上に警戒心もなかったんですよね、子どもで。単にお姉ちゃんは私とお母さんを守ろうとしてくれたのかなと。
電話でも、全然悪いと思ってないみたいで、拍子抜けしました」

バカバカしくなってきて、ソファに体を預けて天井を仰いだ。

「そうだよ。『どうせ信じてもらえない』って言うのも何回か今日言ってたけど。
少なくとも俺は信じたよ。七海ちゃんが思い出した海のことも、アサミを見分けられないんだってことも」

そうか。こうやって信じてくれる人もいるのに、私はちょっとトラブルがあったからって一人ですねてこじらせてるんだ。

「信じてる奴もいるんじゃないの、意外と」

「はい」

自然と微笑んで顔を向けたら意外とまじめな目に出会ってそらせなくて、二人で変な間が生まれたところに「できたよ、どうぞー」と香世子さんの明るい声が聞こえた。

慌てて立ち上がり、お手伝いに行く。




『どうせ信じてもらえない』って、確かに言ってる。大地さんが気になるくらいに、何回も?

そもそも子どもの時に、お母さんが信じてくれなかったからだけなの?

恥ずかしい。かっこ悪い。やめたい。



信じてもらえないことは、本当にある。

でも、信じてくれる人もいる。

信じてもらえるかもしれない。

そう思ってみればいい?
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