潮風の香りに、君を思い出せ。
Wikiやブログを幾つか見た。

相貌失認症についてわかったのは、こんなこと。


人の顔のパーツがばらばらのまま認識され、顔全体のイメージつまり相貌が認識できない。

表情の変化がわからない、自分の顔もわからないという重症の人もいれば、単に人相の覚えが悪い程度の軽い人もいる。

先天性の脳機能障害が多く、治すことはできない。

遺伝することが多いが、詳細はわかっていない。

軽い人を含めれば人口の2%が該当すると言われている。



ある程度わかってきたところで、画面から目を離して大地さんが私を見た。

「どう?思ったよりそういう人多いみたいだよね」

「どうかな。私はそこまでひどくないっていうか、表情もわかるし、覚えた人の顔はパーツとかじゃなくてちゃんとわかると思うんですけど」

脳機能障害って、そんな大ごとではない気がする。あてはまるところは確かにあるのだけれど。

特に、知っている人でも場所と服装が違えばわからなくなるというところ。




「気を悪くしないで欲しいんだけど、俺は今日、七海ちゃんのは物覚えが悪いなんてレベルじゃないって思った。人の顔を覚えられないだけじゃなくて、よく見分けられないんだよね。書いてあったけど、犬猫の顔を見分けられないのと似てるって」

大地さんは言いにくそうに言葉を切ったけど、結局言った。

「程度は軽いんだろうけど、こういう症状なんじゃないかな」

障害という言葉を避けてくれたのがわかった。いろんなレベルがあるらしいから、この一種かもと言われればそうかもしれない。

「かもしれないです。でも治らないんですよね、これ。なにか変わるかな。結局できないことはできないままだし、脳機能の問題だってわかったとして何が変わるんだろう」

拗ねてるわけじゃなくて、本当に何か違うのって疑問に思って首を傾げた。どうせって拗ねるのはやめられたらとさっきも思ったけど、名前がついたからって治らないんでしょ?
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