潮風の香りに、君を思い出せ。
「私もちゃんと彼と話したほうがいいってことですか」
本当に終わりなのかとか、そういうことを? 大地さん達には必要なことでも、私にとってはかなり今更に思える。
「そう。だってさ、他の子がいるってのも本人に聞いてないんだろ? 同い年のやつ?」
「一つ上です」
「就活やってて忙しかったりするんじゃないの」
「でも、全然連絡ないし」
「七海ちゃんもしてないんだよね?」
なにこれ、恋愛相談?より戻せって言われてるみたい。
「アサミさんが怒った話をしたとき、信じてくれなかったんです。私のこと」
「顔がわからなかったっていうことを?」
「そっちは興味すらないみたいで、ヒロさんと何もないってことを。ヒロさんと知り合いらしくてやたらと疑ってきて、何回も説明したのに信じてくれないならもういいって思って、だんだん嫌になって」
「やっぱり信じるよって言われたら?」
いつの間にか私に向き直ってじっと見ながら、やけにまじめに大地さんが聞いてくる。なんでそんなこと聞くの?
「そんなに彼とより戻して欲しいんだったら、考えてみます」
結局そういうことなのかと、がっかりしたしイライラした。結局お互いもとに戻ればいいってこと?
「言ってないって、そんなこと」
「言ってます」
「言ってほしくない?」
「わかってるくせに、聞かないで」
横を向いて顔を見ないでつぶやく。またそうやって私に聞いて、ずるいよ大人のくせに。
彼とは他に好きな人がいるって言ったでしょ。
「言ってないし、思ってないよ」
言いながら肩を今度は引き寄せられて、そむけた顔に回り込んで軽くキスされた。