花と光と奏で
光に包まれて/光の奏で〜side紫音
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「こんな時間まで、一人で出歩くのは関心しないよ」
懐かしい土地で、想いをのせた音を奏でていた私に、聞き覚えのある優しい声がかけられて、それが私を現実へと戻した。
振り返った先に、この場所にいるはずのないその姿をとらえて驚いた。
私は信じられない思いでその姿を凝視したまま、
『どうして………いるんですか…?……ここ、イギリスですよ?』
「会いたかったから」
『え?』
そう思えば、いつでも会える距離かのように、何の違和感もなくそう言った一先輩に、私の思考がマヒしてくる。
「月瀬さんにどうしても会いたくて来たんだ。
ずっと、言えなかったことがあったから……」
“言えなかったこと”
一先輩から出たその言葉に、頭の中によみがえった終業式後の帰り道の光景。
あの時の二人の姿が浮かんできて、私の心にまた痛みが走った。
凍らせたはずのそこは、まだ完全じゃなかったのか、痛みの棘が刺さり、ピシピシと音を鳴らしてひび割れさせてくる。
"ダメ………"
私はグッと奥歯を噛み締め、絡んでいた視線をそらした。
『……こんな所にまで来て、改めて教えてもらわなくても大丈夫ですよ?』
他に理由が思いつかなかった私は、思いついたままのことを、声が震えないように平静を装って、もう一度その目を見つめて言った。
再び絡み合った視線。
私を見つめてくる先輩の瞳の色は、いつもと変わらず優しくて……
その優しさが私の心に溶け入り、切なさを運んでくるから、今押しとどめようとしていたものが、私から溢れ出した。
切なすぎて、意思とは関係なくこぼれた雫。
その私を見つめていた先輩の目が、大きく見開かれて……
「違うから」
そう言って、一歩一歩私へ近づいてきた先輩が、私の目の前に立った。
「泣かないで……」
"私……………"
ママのことを知ってから、私の中で当然のように押し殺していた行動。
瞳からこぼれた雫は頬を伝い、私は涙を流した。