花と光と奏で
「紫音と出会えたことが俺の幸せ」
閉ざされていた場所に、再び射し込んできた光。
自分自身でも、どうすることも出来なかった強固なそこへあたたかく届き、響いた音(声)。
「好きになるのに時間なんて必要なくて、
屋上で見た時から俺の心をとらえて離さなかった存在に、
もうずっと前から紫音を探していたんだと思った。
だからこそ、紫音は俺にとって、奇跡そのものなんだよ」
その言葉で、凍っていたものがいくつもの小さな塊と形を変えて溶け出し、私の瞳からそれが再び溢れ出した。
私を優しく見つめたままの先輩の瞳の色は、
切なさと愛しさ。
先輩はもう一度、自分の胸の中へと私を引き寄せた。
「愛してるよ、紫音」
“愛してるわ、紫音”
耳元で囁いた先輩の言葉が、
私へ伝え続けてくれていたママの想いと重なって、記憶を呼び起こす。
“あなたを愛してる”
“いつもそばにいるから。あなたの奏でる愛の音にも寄り添っているから”
“あなたとめぐり会えた奇跡に、心から感謝しているわ”
“あなたへの想いを忘れないで”
“あなたを愛してるわ、紫音”
苦しくて……苦しくて一緒に凍らせていた私への想い。
大好きなママがくれた……最後の言葉。
"マ…マ…………ママ…………………"
『………ママ……私…ごめ……』
言葉が詰まり、泣きじゃくる私……
「大丈夫だよ。紫音の想いは届いてたから」
穏やかな優しい音(声)。
「ごめんな……本当なら紫音から聞くべきことを、七聖から聞き出した」