猫の湯~きみと離れていなければ~
「で、…その変な顔はなに? 」
とりあえずトレーニングの成果を試してみようと思って笑顔を向けてみたけど、ママの評価はわたしの予想した通りだった。
親が『変』と言う顔なんて、誰が見ても絶対に変に決まっている。
わたしは、はぁーと大きなため息を吐き出した。
今日はこれで何回目のため息なんだろう。
「ママはお気楽でいいよね。娘は不安で押し潰されそうなのに」
「何言ってるのよ。やっとここに戻って来れたんだし、陽向(ひなた)がいるから心配ないでしょ? 」
『その陽向に会いたくないんだってば』なんて言ったらどれだけ驚いちゃうんだろう?
絶対に言えないし、言うつもりもないけど。
それに
『やっと』、…か。
わたしにとっては『いまさら』なんだけど。
『 行きたくないっ! 』
息ができなくなるまで泣きわめいたあの日から、6年も経とうとしてる…