猫の湯~きみと離れていなければ~

「えー、もう学校に行くの? まだお弁当を作ってもないわよ」


リビングに行くと、ママが大あくびを隠すことなく目をこすりながら起きてきた。


「陽向が勝手に待ち合わせして勝手に待ってるみたいなの。お昼は学食で食べるからママはまた寝てていいよ」

「あんたたち元気ねぇ」

「やだ、一緒にしないでよ」


また寝室に戻ろうとするママが思いついたように振り返った。


「タンスの位置を変えたいから帰りに陽向に家に来いって言っておいて。夜ごはんにハンバーグをごちそうするからって」

「うん、伝えておくね。いってきます」


陽向の大好物のハンバーグ。

さすがママ。
絶対に陽向はこの話に絶対にとびついてくるはず。


ということは、また今日も一緒に帰ることになるの?

陽向に撫でられたのを思い出して、触られた髪がくすぐったくなってきた。


玄関を開けたわたしはハッと気づいて1度閉め直した。
そして今度はそろーっと開けて周囲を確認した。


よし、あの黒猫はいない。

きっと今日は良い日になるはず。


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