猫の湯~きみと離れていなければ~

陽向に連れてこられたのは校舎の裏の奥にある大きな樹木だった。

周囲が数メートルはありそうなゴツゴツとした大きな幹、高い位置で数本に大きく別れている太い枝は、生き生きとした若い枝を伸ばしていて、たくさんの葉っぱを繁らしている。

樹齢数百年っていう言葉がぴったりの、神聖さが漂っている大きな楠木。


「立派な木…」


普通の学校にこんな木が存在しているなんて驚きで、わたしは首が痛くなるほど見上げていた。


「すっげーだろ。で、それが猫地蔵な」


紹介してくる陽向は少し自慢げな顔をしている。


太い根っこの間に守られるように、飾り気のない平たい石の台座があった。
その上には丸くて艶がある大きな石が乗っていて、石を囲むようにたくさんの花で飾られていた。


「猫石って呼ぶ人もいるみたいだけどな。撫でてご機嫌にさせたら願いが叶うらしいよ。やってみる?」


そう言われれば、猫が丸くなって寝ているようにみえる。

どうやら願掛けしている人がお花を供えているっぽい。

< 102 / 328 >

この作品をシェア

pagetop