猫の湯~きみと離れていなければ~
「祥子、巻き込んじゃってごめんね」
「何言ってんのよ。あいつらムカつくから本当はガツンと言ってやりたいんだけどね」
階段の踊り場で、祥子はわたしを励まそうと頭をよしよしと撫でている。
「それにしても酷いことを言うようよねぇ。まともに受けたらダメだぞ? 」
ダメな妹を心配するお姉さんみたい。
でも言われたことで落ち込むというよりは、今は腹だたしくて仕方がない。
「でも鈴? あたしも聞いたんだけど、…逢坂くんに抱きついてたって本当なの? 」
わたしは首をふりながら答えた。
「猫を避けようとして陽向の後ろに隠れたの。それがそう見えたんだと思う」
なんでそんなことが変な噂になってしまうの?
陽向が人気があるから?
あの場を見ていた人がいるなら、そうじゃないって分かるはずなのに。
話が誇張されてしまっているのは悲しくなってくる。
「なーんだ、勘違いじゃん。あたしねー、鈴が逢坂くんを好きなら応援しようと思ったのにー」