猫の湯~きみと離れていなければ~
わたしはこの町で生まれ育って、でも小学4年生の時にパパの転勤で引っ越していた。
戻ってくるのは来年の予定だったのだけれど、わたしの高校入学に合わせて、先にママと2人で戻ってきていた。
別れ際にパパが大泣きしていたのが忘れられない。
週末にはこっちで一緒に過ごす約束をしているのに。
そして、ママが“陽向”と呼んでいるのは
逢坂 陽向(おうさか ひなた)。
家族ぐるみの付き合いがある幼なじみで、同じ歳の男の子。
転校してからは、わたしからは1度も連絡を取ってはいないし、取りたくなかった。
だから会いづらい。
まぁ理由はそれだけではないのだけれども。
それにその陽向が、わたしが挨拶のトレーニングをしている相手でもあるわけで。