猫の湯~きみと離れていなければ~
すぐにわたしを信じてくれた祥子と、そして自分に聞かせるようにわたしは答えた。
「陽向はね、わたしには子供のときの感覚で接してるだけだから。…あれ? 」
そう言葉にした途端、涙がこぼれはじめた。
「違う、これ目にゴミが…」
だけど、もうそんなレベルの涙の量じゃない。
指でいくら拭っても溢れてくる涙はごまかせきれない。
この気持ちは誰にも知られたくないのに。
「なんで泣くの? …え? ええっ? まさかそーゆー事?! うわっ、変なこと聞いてごめん、誰にも言わないから。つらいこと言わせて本当にごめんっ! 」
わたしの気持ちに気づいた祥子はあたふたしながらも、わたしを抱き締めてよしよしと頭をなでた。
「泣かないでよ鈴ぅ。あたしまで泣けてくるじゃないの」
「ごめんね、わたし次の授業休む。こんなんじゃ……」
「そうだね。あの2人に見られたらまた絡んできそうだし。先生には保健室って言っておくから。でも一人で大丈夫? あたしも付き合おうか? 」
「ううん、大丈夫。落ち着いたらすぐに戻るね。これお願い…」
祥子に陽向の教科書を渡すとわたしは教室とは別の方向に足を向けた。