猫の湯~きみと離れていなければ~
「何の騒ぎ? 」
「副会長のわめき声聞こえない? 」
誰かが近寄ってくる気配がした。
その途端、カラスたちは一斉に空へと飛び立ち、一瞬で姿を消した。
無数の羽だけが木の葉のようにヒラヒラと舞い落ちてくる。
「いまの何? …でも、助かったぁ」
顔や足にズキズキと痛みがあって、ケガをしたのが分かる。
肩で息をしながら箒に寄りかかって体を支えているわたしを、副会長は心配そうに見上げていた。
「わたしは大丈夫よ。…ほら、体見せて? 」
副会長は「好きにしろ」という感じでその場にしゃがんだ。
わたしは戦いでボサボサになった副会長の毛並みを掻き分けて、いくつかのかすり傷を確認すると、やさしく撫でた。
「あの数と闘うなんて。あんたってけっこう強いんだね」
その言葉が分かったのか、副会長はごろごろと喉を鳴らしながら目を細めた。
「うわっ、何があったの? 」
「家がめちゃくちゃになってるっ」
食器や猫用トイレがひっくり返り、無数に散らばるカラスの羽。
やってきた生徒たちがこの惨状に驚いている。
「だれか副会長を病院に連れて、」