猫の湯~きみと離れていなければ~
わたしは足を早めて歩きだしたけど、すぐに追いつかれ回り込まれてしまった。
「授業サボってどこ行ってたんだよ? 保健室にいないから探して、ってどうした? 」
陽向はわたしの顔の傷をみて驚きを隠せないでいる。
「階段から落ちただけ。たいしたことないから」
「たいしたことない傷じゃないだろ、…家まで歩けるか? 」
そういうと陽向はスマホを取りだし電話をかけはじめた。
「もしもし鈴母さん、鈴が、……は? タンス? …そんなことより鈴がケガしてるんだよ。迎えに来れない? 」
余計なことしないで。
ママに言ったら騒ぎ出すに決まっているのに。
ふいに久美子の言葉が浮かんできた。
『幼なじみだから仕方なく相手をしているのが分からないの?』
そんなの、…分かってるわよ