猫の湯~きみと離れていなければ~

―― ピピピッ、ピピピッ、


話を割るように体温計が鳴った。


「あ、36.3度だって。もう治ったね」


わたしは体温計を取り出すと明るく振る舞いながらママに見せた。

わたしが明るくしていればパパとママを悲しませずにすむのなら、それでいい。


「戻りたくなったらいつでも戻れるってことだけは覚えておきなさいね」


でも誤魔化せてはいないみたいで、ママは真剣な表情を崩さない。

それにそう言うってことは、学校での話し合いでこの問題は解決しなかったってことだよね。


「とりあえず何か食べれそう? 体力を回復しないとね」

「パパのアイスは? バニラがいいな」

「もちろんたくさんあるわよ。あ、時計見て、2時22分」

「にゃーにゃーにゃーだね」


あと20秒で23分に変わるところだった。


ゾロ目の時間ってどんなときでも得したように感じる。


ママは小さくガッツポーズをすると、アイスを取りに1階へと降りていった。
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