猫の湯~きみと離れていなければ~
探しに行かなきゃっ
そう思ってクローゼットをあけてハッと気がついた。
こんな気持ちいらないって思ったんじゃなかったの?
なら、とんぼ玉なんて持ってても仕方のない物じゃないの?
ましてやこんな真夜中に探しに行くの?
…わたし、何をやっているの?
―― コンコンッ
「鈴、お待たせー」
軽いノックをしてママが入ってきた。
持っているトレーにはお粥とバニラのカップアイスが乗っている。
「ママ、ちょっと出掛けてくる。懐中電灯ってどこにある? 」
やっぱりあきらめきれない。
怒られるのを覚悟でママに言った。
「あらら、寝ちゃったのね」
「…ママ? 」
ママは小声になると、机にトレーを置いてベットに寝ているわたしに布団をかけなおした。
「え? なに? 」
わたしはここに立っているのに、わたしがベットに寝ている。
何がおこっているのか分けがわからなくなる。
「ママ? …ねぇママ、」
ママの体を強く揺さぶってもママはぜんぜんわたしには振り向かないし、それに声も届いていないように思える。
「やだ、何の冗談? ママっ?」