猫の湯~きみと離れていなければ~
「幽体離脱だ」
「っ! きゃああ! 」
下の方から男性の声が聞こえたかと思ったら、わたしの足元に黒猫がどっしりと座っている。
大きな顔にボテボテとしたお腹、そして特徴的な稲光型のカギしっぽ。
これってどう見ても絶対に副会長にしか見えない。
「ちょっと、どこから入ってきたの? ってか今喋った? 喋ったよねっ? 」
「おい、落ち着け。まずは話を…」
「ほら、やっぱり喋った! ママ見てっ、副会長が喋ってるのっ! 」
落ち着けるはずがない。
だって目の前で猫が、副会長が話しているんだから。
しかも声が低くてかなり渋い。
絶対にママの好みの声に間違いない。
「あああ、うるさいにゃっ! これだから子供は嫌いなんだにゃっ! 」
シャーーーッ!
牙をむき出しにして威嚇をしてくる副会長。
わたしは一瞬驚きはしたけど、おかしくなってクスクスと笑いだしてしまった。