猫の湯~きみと離れていなければ~
「うにゃ? …お前、俺が恐ろしくないのか? 」
「あのねぇ、語尾に『にゃ』ってつけられてて怖いわけがないでしょ? 逆に強面とのギャップがありすぎて可愛いぐらいにゃ」
わざと副会長の真似をしてみた。
「くっ、失礼な小娘だな。…まぁそんなくだらないことはどうでもいい。とにかく話を聞け」
「はいはい」
二つ返事をしながら、わたしはしゃがんで副会長に目線を合わせた。
これってまた熱が上がってきて、変な夢を見ているのかもしれない。
「お前の今の状態だが、幽体離脱というものをしている」
そう言いながら副会長は可愛い前足で、わたしの足先をぽんぽんっと軽く叩いた。
「なにこれ?」
足先からは1本の銀色の細い紐のようなものが、生えるように伸びていている。
わたしは引っこ抜こうと思って触ろうとしたけれど、まるで光の線みたいに手で触れることができない。
それはベットで寝ているわたしへと続いているみたい。
「この銀色の糸が、今のお前とお前の体を繋げているんだ」
「幽体離脱って? わたしは死んで幽霊になってるってこと? 」
「お前はバカか? 」
わたし今、バカって言われたよね?
「死んでないやつが幽霊になるわけがないだろう? この世界では精神とか魂と呼ばれる状態だ」
なるほど。
だからわたしの姿がママに見えていないのね。
と思わず納得してしまった。