猫の湯~きみと離れていなければ~
「体の機能が止まるか、この糸が切れないかぎりは死ぬことはない」
「じゃあ早く体に戻ったほうがいいよね? 教えてくれてありがとう」
夢としか思えないからなのかもしれないけれど、不思議とこの状況をすんなりと受け入れているわたしは、副会長の頭をなでなですると体にむかった。
「おい、ちょっと待て。猫の話は最後まで聞けって 」
慌ててわたしの足に飛びついてきた副会長は、なんといっても巨漢。
止めるどころか勢いあまって、わたしはタックルをされたように押し倒されてしまい、おでこを思いきりベットのマットレスにぶつけた。
「いったー」
「すまないな。でも俺の話を聞かないお前の愚かさが招いたことだ」
そう言いながら、副会長は今のタックルで乱れた毛並みを整いはじめた。
この化け猫、人を倒しておいてその言いぐさと態度はなんなの?
「もう限界。あんたわたしに何の恨みがあるわけっ? 」
「にゃ? 」
わたしが振り返ると、副会長は耳としっぽを下げてひるんでしまった。
失礼ね、そんなに恐い顔はしてないはずなのに。